「相続時精算課税」制度の要件は、次の通りです。
- 65歳以上の親から20歳以上の子への贈与であること
※子が亡くなっているときには20歳以上の孫を含む - 最初の贈与を行った年の翌年2月1日~3月15日までの贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」を提出すること
相続税対策として本制度を活用する場合の具体例として次の場合が考えられます。
高収益物件の贈与
親から息子へ収益性の高いアパートを贈与した場合があげられます。
アパート等の収益物件の贈与は、贈与後の賃貸収入が受贈者の収入(不動産所得)となり、贈与しない場合と比較して贈与者の相続財産となる現金が増加しません。
以前は、収益性の高いアパートなどを子に贈与しようとしても高額な贈与税の負担のため実際には贈与を実行できないことがありました。しかし現在は、本制度を活用することにより、贈与者の相続財産の増加を防ぎ、受贈者への財産移転をできるようになりました。
値上がりする財産の贈与
土地、自社株、株式公開直前の株式など将来値上がりしそうな財産を贈与した場合があげられます。
将来相続が発生した場合、相続財産に加算される贈与財産の価額は贈与時の価額です。そのため、不動産や株式等を贈与した場合、贈与時点より価額が値上がりしていれば相続税の計算に算入される相続財産を値上がり分だけ圧縮できることになり、節税効果は大です。
自社株など相続したい財産の贈与
本制度を利用して自社株を贈与した場合があげられます。
会社の後継者(例えば長男)が決まっていたとしても、いざ相続が発生すると自社株(経営権)を引き継げるかどうかはわかりません。そこで、生前に父から後継者へ父の持株を本制度を活用して贈与すれば、贈与税の負担を軽減させながら後継者の経営権を確保できます。
また、相続時に相続財産に加算される価額は前述のとおり贈与時の価額です。例えば1000万円の自社株を贈与した場合、仮に相続発生時に1億円に値上がりしていたとしても、贈与時の価額1000万円で計算されるので、相続税の節税効果は大といえます。
前回お伝えしたように、留意点(デメリット)もたぶんにあります。本制度を活用される場合は、十分検討し慎重に決断する必要があります。しかしながら、生前贈与は活用方法次第ではとても有効な相続税対策となりますので、ぜひ活用してみて下さい。