特別受益について

HOME » 税理士コラム » 特別受益について

特別受益について

特別受益(民法903条)とは、被相続人から生前贈与や遺贈によって多額の金銭などを受けた場合の利益のことをいいます。

要は、相続人の中に被相続人から相続発生前に贈与を受けたり、遺贈を受けたりした者がいる場合、この者が他の相続人と同じ相続分を受けられるとすれば相続人間で不公平になります。

そこで民法ではその不公平な取扱いを是正して、なるべく公平な相続分にしようというのが特別受益の考え方です。

特別受益の考え方は「相続税の節税」対策には直接関係はありませんが、「争族」対策には関係してくる話なので今回取り上げてみました。

特別受益となるケースは、、、

  1. 婚姻、養子縁組のために贈与を受けた場合
  2. 遺贈を受けた場合
  3. 生計の資本となる贈与を受けた場合


例えば、結婚時の持参金、住宅の購入資金、特別な学費などです。

ただし、そもそも子は親から扶養を受ける権利がありますから、受けた利益が特別かどうかはそれが「社会通念」を超えるかどうかで決まることになるので、判断が難しいことが多いです。

ちなみに、相続人に対してなされた遺贈は、その目的や額に関わらず、すべて特別受益となります。


法定相続分で分ける場合の計算具体例(特別受益がある場合)

※前回のコラムの遺産額を使用します。

遺産額 1億円 + 特別受益2000万円(長男) = 1億2000万円
法定相続人 妻(65歳)、長男(45歳)、長女(40歳)

【各相続人の相続額】
(1億円+2000万円)×1/2= 6000万円
長男(1億円+2000万円)×1/4 -2000万円(特別受益)= 1000万円
長女(1億円+2000万円)×1/4= 3000万円

妻、長女は法定相続分を取得できるのに対し、長男はすでに2000万円もらっているので、法定相続分3000万円から特別受益分2000万円を引いた1000万円が実際に取得できる金額となります。

なお、特別受益額が相続額を超える場合は何も相続できませんが、自分のもらい過ぎた分を他の相続人に返す必要はないということになっています。

特別受益についてお伝えしましたが、円満に遺産分割協議が行われればわざわざ特別受益を持ち出す必要はありません。必ず特別受益を考慮する必要はないということです。

「争族」とならないよう、円満に遺産分割協議ができるよう、早めの相続対策を行うことを心掛けましょう。